“京都はんなりずむ”を訪れて頂きありがとうございます。
京都在住のブロガーKyotaroです。
京都にはたくさんの観光寺院があり、中には背後の山並みなどを借景にした“借景庭園”と呼ばれるスポットがたくさんあります。
京都市街地から眺めることのできる“比叡山”を借景にした洛北幡枝にある圓通寺もそのひとつ。
“京都最後の借景庭園”と呼ばれる圓通寺の由緒とアクセスについてまとめました。
圓通寺が京都最後の借景庭園と呼ばれる理由
京都に数ある借景庭園は近年、土地開発や後継者の問題で減少傾向にあります。
京都ならではの美しい景観が失われていくのは本当に残念ですが、かつて京都市の眺望景観に関する条例ができるまで苦悩されたのが今回紹介する「圓通寺」のご住職。
「借景庭園」は庭園内に作り出される空間と外部の景色がひとつの景観を作り上げるため、開発等により高層マンション建築等でその景観が損なわれることがよくあります。
そのような理由から京都の借景庭園は減少しているのですが、「圓通寺」も美しい借景を守るための苦労があったといいます。
これから訪れるあなたに知っていただきたい内容をまとめました。
詳しく見ていきましょう。
圓通寺は修学院離宮の前身?
「圓通寺」は京都洛北の地に佇む臨済宗妙心寺派の禅寺ですが、もともとは江戸時代初期1639年(寛永16)に後水尾天皇が造営された「幡枝離宮」が始まりと云われます。
その後、修学院離宮が完成するまで皇室ゆかりの宮殿としての役割を果たしてきました。
修学院離宮完成後は、皇室の祈願所となり、後水尾天皇以降の歴代皇族の御尊碑が皇室ゆかりの御幸御殿に祀られている皇室ゆかりの寺院です。
近からず遠からずの霊峰を借景にした苦悩
後水尾天皇はこの地に「借景庭園」を造るまで12年もの歳月を要されました。
その理由は京の都どこからでも眺めることのできる雄大な比叡山が最も美しく眺められる場所はないか?と探し求めたからと云われます。
比叡山を正面にとらえる真西の場所を探すのは容易だったようですが、借景庭園ならではの“遠近法”という意味での位置関係に後水尾天皇はかなり苦労されたようですね。
比叡山は昔から京都の人より“近からず遠からず”と言われてきたのですが、近くで見ると相当な威圧感があり、少し離れるとすごく遠く感じる、といいます。
これが比叡山が霊峰と言われてきた由縁なのでしょうか?後水尾天皇はようやくその不思議な“遠近法”を攻略し、現在の圓通寺の場所を12年がかりで探し当てられたのです。
京都市眺望景観条例に守られた庭と住職の思い
1990年代(平成)になると圓通寺周辺の洛北で行政による区画整理事業が始まり、その事業によって徐々に比叡山の景観が損なわれることなります。
1992年(平成4)に一条山が開発に伴い崩され、比叡山の景観が損なわれることに危機感があった現住職は2002年(平成14)、それまで禁止にしていた庭園の写真撮影を許可します。
圓通寺の比叡山を眺める借景庭園の素晴らしい景観をひとりでも多くの人に知って貰うためです。
その後も圓通寺周辺の土地開発は進められ、2007年(平成19)に京都市の景観を守るための条例が施行されるまでご住職の孤独な戦いは続きました。
「京都市眺望景観創生条例」が施行され、圓通寺の庭園からの眺めは規制区域となり、現在の美しい借景庭園が存続しているのです。
圓通寺の借景庭園に施されたトリック
圓通寺の借景庭園(枯山水庭園)について詳しく紹介していきましょう。
400坪ほどある広い庭園は杉苔で覆われており、その奥には数十個の岩、160㎝程度の生け垣、混ぜ垣の順に配置されていることがわかります。
実はこの配置にこそ“遠近法”を巧妙に使ったトリックが仕掛けられていて、手間の庭が小さな模型のように感じる手法が用いられてるのです。
生け垣、混ぜ垣は比叡山と圓通寺との間の障害物を排除する役割があり、庭園の杉の木と方丈にある柱の位置までが借景と庭園の位置関係から計算しつくされてるといいます。
方丈から眺める庭園はまるで一枚の横長の絵葉書のようなパノラマが広がり、くっきり見える比叡山の雄大な姿に感動します。
京都市街地から眺める比叡山と異なり、山肌までくっきり分かるが美しさも感じる、程よい距離感に心を奪われます。
新しくなった山門
2019年秋に訪ねた時から山門が変わっていましたのでシェアします。
2019年秋当時は駐車場からすぐの小さな山門から入り、庭園を抜けた先の玄関に受付があったのですが、今回訪ねた際は旧山門が閉まっており「拝観休止?」と思いました。
ですが、その先に「拝観入口」の看板があり、そこまで進むと立派な鉄筋コンクリートの山門というよりは入場門というイメージの門構えになっていました。
ここに受付も移動しており、こちらで拝観料を収めてまっすぐ行くと玄関に辿り着きます。
残念ながら旧山門時に通り抜けた庭園は横目に見るのみとなります。
圓通寺には参拝者専用の無料駐車場がある?
圓通寺のある洛北は京都市内北部に位置し、アクセスがやや不便なエリアです。
圓通寺がある京都岩倉はかつて平安貴族の隠棲地であり、明治から大正にかけては地名にもなっているあの「岩倉具視」の幽棲した旧宅が史跡として残っています。
山間にあるアクセスが不便なエリアですが、それが故に観光客が比較的少ないということもあり、静かな景観を堪能することができます。
気になるアクセス・駐車場情報をまとめました。
圓通寺の駐車場が参拝者は無料?
圓通寺は京都岩倉の閑静な住宅街に佇む寺院です。
境内入口には参拝者専用の無料駐車場があり、いつでも車で行くことができるのが嬉しいですね。
駐車台数も20台程度は停めることができるので秋のシーズンに行ってもなかなか“満車”になることはありません。
目印は深泥池を通過して山を上った先にある岩倉自動車教習所を超えて一筋目を左折、あとは「圓通寺」の看板に従っていけば辿り着けます。
圓通寺へ公共交通機関で行く場合
公共交通機関を利用した場合ですが、Kyotaro個人的におすすめするのが「市営・地下鉄烏丸線」に乗って「国際会館駅」まで行き、そこから徒歩、又はタクシーでいく方法。
これなら京都駅からでも40~50分程度の所要時間で行くことができます。
もうひとつは「叡山電鉄」の「木野駅」を利用する方法ですが、出町柳で京阪→叡電に乗換えたり、駅から徒歩20分以上はかかるのであまりおすすめしません。※木野駅前はタクシー拾うのに時間がかかるかも!?
交通費的には京都駅から「市営地下鉄烏丸線」で終点の「国際会館駅」まで行って片道290円でタクシーの場合はタクシー運賃が加算されます。
アクセスの不便さが作り出す静寂
京都岩倉には他にも「実相院」や「妙満寺」「宝が池公園」などのスポットがありますが、比叡山麓のエリアということで行楽シーズンでも観光客が比較的少ないです。
ひとつの要因としてはアクセスの不便さがあり、行き方がよくわからない、ということがあげられると思います。
でも紅葉シーズンは美しい景観を静かに楽しむことができますし、圓通寺は紅葉シーズンの平日であれば借景庭園の空間をひとり占めできる可能性もあります。
“静心にてお参りください”という言葉通り、静かに瞑想の時間を作れるスポットですよ。
圓通寺へのアクセスと駐車場について
●大悲山圓通寺
TEL:075-781-1875
〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町389
■拝観料金 大人500円 小中学生300円
■拝観時間 10:00~16:30
※12~3月は拝観16:00まで
■アクセス 叡電、地下鉄の最寄駅から結構歩く
・叡山電車/「木野駅」下車、徒歩約20分
・京都バス/自動車教習所前下車、徒歩10分
・京都市営地下鉄/「国際会館駅」下車、徒歩23分
■駐車場 自家用車20台(無料)
まとめ
京都岩倉、洛北エリアにある「圓通寺」の借景庭園について紹介させて頂きました。
今現在も残る借景庭園を守るために相当な苦労があったことをご住職から以前に聞いたことがあり、「何度も辞めよう」と思ったほど辛い過去があったとのことです。
ご住職の努力がなければ、諦めておられれば今は失われていたかもしれない、まさに「京都最後の借景庭園」だったんですね。
ここからの景観は比叡山を借景にしてることもあり、京都にある他の庭園と比べても随一の美しさ、感動があります。
この記事を見てあなたも「圓通寺へ行こう」と思っていただけたなら、そしてあなたの参考になったのであれば幸いです。
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