穴太衆積みの石垣、比叡山門前町の坂本で信長も惚れた伝説の技に触れた日

滋賀県と琵琶湖
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“京都はんなりずむ”を訪れて頂きありがとうございます。

京都在住のブロガーKyotaroです。

先日、彦根城へ行く機会があり、400年以上も昔の石垣と明治期に再建された石垣、ふたつの石垣を同時に見る機会がありました。

同行していた先生に聞いたところ、穴太衆積みとよばれる、ごつごつとした自然石を積上げた400年以上も昔の石垣の方が、明治期の近代的で美しい石垣よりも頑丈で耐震性にも優れている、という興味深い話が聞けました。

今回は石垣の町として知られる比叡山坂本を巡る特別な散策ルートで、戦国の世から現代へと技術をつなぐ穴太衆(あのうしゅう)の心と技をたどります。

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まるで石垣の美術館!穴太衆積みが息づく坂本へ

京都三条京阪から、地下鉄東西線と京阪電車の京津線を乗り継ぎ「坂本比叡山口」駅まで約40分程度。

比叡山延暦寺の隠居坊が集まる里坊の街「坂本」を歩いてきました。

約2.9kmの道程は、まさに石垣の美術館。

第十五代穴太衆頭で穴太衆積を唯一現代に受け継ぐ粟田建設の粟田純徳社長にお会いして、お話する機会があり、改めて坂本の魅力が再発見できました。

粟田建設の前庭で感じたもの

まず訪れたのは、穴太衆の伝統を現代に伝える粟田建設。の敷地内にある前庭です。

ここは、穴太衆の技術を伝える唯一の現存する組織である粟田建設の本拠地であり、敷地内にある前庭では野面積みの石垣を見ることができます。

自然石を巧みに組み合わせた力強い石積みは、まさに「石の声を聴く」という口伝の技術を体現しているように感じました。

まさに自然石の美しさと、それを組み上げる技術の粋を感じてもらえる場所。

穴太衆が守り続け、あの信長も比叡山焼き討ちの際に惚れ込み、その技術を有する穴太衆を安土城築城の際に召し抱えたという、野面積みの石垣の力強さ、そして個性的な石一つひとつの自然体の表情。

この石積みの奥深さには、文字通り穴太衆の技法、魂が込められていることを肌で感じ取ることができます・

坂本、里坊の街並み

滋賀県大津市の坂本は、比叡山延暦寺の僧侶たちが隠居した里坊が集中する街として発展してきた歴史があります。

国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されているこの街並みでは、約50軒もの里坊すべてが穴太衆積みによる美しい石垣と白壁で区切られている独特の景観を見ることができます。

石垣の高さや積まれ方が里坊ごとに異なり、その多様な表情を楽しみながら歩くことができ、Kyotaroは石垣が続く街並みの向こうに見える琵琶湖の景観がとても素敵で、しばらくその場に佇んでいました。

坂本の里坊は、それぞれの敷地の境界に美しい石垣が築かれていて、これらはまさに穴太衆積みの生きた教材のようなもの。

自然石を加工せずに巧みに組み合わせた石垣が、約50軒もの里坊を荘厳な景観で繋いでいることに気付かされます。

石垣が単なる壁ではなく、町の景観そのものを形作っていることに感動しました。

滋賀院門跡の石垣に圧倒される

滋賀院門跡は、里坊の中でも最も格式高い天台宗三門跡の一つで、江戸時代末まで天台座主の居所だった寺院。

広大な境内は、豪壮な穴太衆積みの石垣と白壁で囲まれており、その威容は圧巻です。

また、江戸時代初期に天海大僧正が創建に関わり、小堀遠州作とされる国指定名勝庭園や、狩野派の障壁画を鑑賞できるなど、文化財としての価値も高いスポットですが、今回は主役である石垣に注目。

粟田社長によると滋賀院の石垣は、穴太衆の技術が持つ威厳と安定感を象徴しているとのこと。

確かに大きな石がまるで生き物のように組み合わさり、何百年もの風雪に耐えてきた姿に訪れた人は圧倒されるでしょう。

この石垣の裏側には、水はけを良くするための工夫や、石を積む順番など、口伝でしか伝わらない知恵が詰まっているのかと思うととてもワクワクさせられました。

慈眼堂(じげんどう)

滋賀院門跡の西側、恵日院の境内にある、天海大僧正(慈眼大師)の廟所も訪ねてきました。

1646年、江戸時代初期に建立された建物は国の重要文化財に指定、禅宗様式を基本とした落ち着いた佇まいを見せます。

境内には天海が移した鵜川四十八体石仏群の一部や歴代天台座主の墓、さらには徳川家康や紫式部の供養塔まであり、歴史の重みを感じさせる静寂な空間が広がります。

芙蓉園・穴太衆積みの石垣

日吉大社鳥居前にある食事施設の「芙蓉園」、入口付近には見応えのある穴太衆積みの石垣と巨大な看板があり、まさに穴太衆積の街であることを印象付けています。

この付近は重要伝統的建造物群保存地区の中でも、特に石垣が連続する見どころのひとつで坂本の歴史的景観の核となる場所です。

高低差やカーブに合わせて、大小さまざまな自然石が緻密に組み合わされており、石工集団が培ってきた柔軟な対応力と美意識を感じ取ることができます。

日吉大社

比叡山の麓、坂本に鎮座する日吉大社は全国に約3,800社ある日吉・日枝・山王神社の総本宮であり、比叡山延暦寺の鎮守神です。

広大な境内にある東西本宮本殿は国宝に指定されており、独特な形状の山王鳥居(合掌鳥居)が有名です。

日吉大社は、平安京の表鬼門(鬼門除け)を守る社として信仰を集め、方除け・厄除けのご利益でも知られています。

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境内にいる神の使い「神猿(まさる)」も人気者で参拝者が足を止めて観賞しています。

日吉大社の参道や境内の随所にも、穴太衆が築いたと思われる力強い石垣をみることができるので、坂本を訪れたら必ず拝観してほしいスポットです。

Kyotaroは東本宮本殿のすぐ横にある磐座「金大巌」への石段から八王子山へプチ登山してきました。

登頂まで20~30分以内で登れますが、かなり急な砂利道をあがるので結構体力が必要ですが、金大巌まで辿り着き、お参りをしたあと後ろを振り返ると琵琶湖と近江の国が広がる絶景のご褒美が待っていました。

ここはぜひお薦めしたい、絶景スポットですが、なかなかの難所なので行かれる際は、歩きやすい運動靴などが必須です。

「石の声を聞け」戦国を築いた伝説の石工集団たち

続いて伝説の石工集団とまで言われた穴太衆(あのうしゅう)とその技術について詳しく見ていきましょう。

あの織田信長さえも唸らせた技術力の秘密に迫ってきました。

穴太衆とは?その技術の神髄

穴太衆は近江国穴太(現在の大津市坂本付近)を本拠地とした石工集団の総称です。

比叡山延暦寺の土木工事を担う中で、独自の石積み技術を発展させましたが、そのルーツは古墳時代に朝鮮半島からやってきた渡来人だったと云われています。

彼らの編み出した技法は「穴太衆積み」と呼ばれ、最大の特徴は加工しない自然石(野石)をそのまま積む「野面積み(のづらづみ)」です。

「石の声を聞け」という口伝に象徴されるように、一つとして同じものがない自然石の形状や性質を見極め、石同士が最も安定して組み合わさるように積んでいきます。

セメントや接着剤を一切使わず、石と石の摩擦と重力だけで構造を保つ、驚くべき技術です。

この技法は、地震の揺れを石垣全体で受け流す高い耐久性を持つとされており、つい先日の彦根城での近代の石垣と江戸初期の石垣のエピソードでも話題になっていました。

戦国時代からの歴史と耐震性へのエピソード

穴太衆の技術は、安土桃山時代、織田信長や豊臣秀吉といった戦国武将に見出され、一躍その名を全国に轟かせました。

彼らが築いたのは、安土城や大坂城、江戸城など日本の歴史を彩る名城の数々。

穴太衆は、城の石垣をそれまでの土塁からより強固で壮麗な石垣へと進化させ、戦国の世の築城術を一変させた“超”職人集団だったのです。

この伝統技術の確かさは、近年起こった熊本での大地震によっても証明されました。

2016年の熊本地震では、甚大な被害を受けた熊本城の石垣の中で興味深い現象が見られたのはまだ記憶に新しいところ。

熊本城の石垣は、もともと穴太衆の石工職人たちが築いたものですが、明治時代以降に大規模な補修がされていました。

熊本地震が証明した穴太衆積みの驚異

大地震からの復旧が進む熊本城

熊本地震で崩落したのは、皮肉にも明治以降の近代技術を駆使して補修した部分が多かったのです。

それに対し、築城当時のまま残っていた穴太衆積みの部分は原型を留めていたものが多く見られました。

特に印象的だったのが「飯田丸五階櫓」の石垣です。

一部が崩壊した際に「奇跡の一本石垣」と呼ばれ、この一本石垣こそが、穴太衆積みの凄さを印象付けたものでご存知の方も多いのではないかと思います。

この事実によって現代の技術を凌駕する穴太衆積みの驚異的な耐震性が証明されたのです。

石の持つ力を最大限に引き出し、自然と調和させる「穴太」の技が400年の時を超えて現代の防災に警鐘を鳴らし、文化財保護に不可欠な技術であることを世界に示しています。

粟田建設の粟田社長もその復旧のための調査・修復プロジェクトにも携わっておられます。

この坂本散策は、単なる観光ではなく、日本の歴史と伝統技術の「深さ」と「強さ」を肌で感じる特別な体験となるでしょう。

ぜひ、石垣の街・坂本で、石工たちの「魂」が込められた石積みに耳を傾けてみてください。

坂本比叡山口へのアクセスと駐車場について

坂本比叡山口駅前にある石垣

坂本比叡山口へは京都市内・三条京阪より地下鉄東西線と京阪電鉄の京津線を乗継ぎ、びわ湖浜大津で京阪石山坂本線に乗り換え、終点の坂本比叡山口まで約40分の所要時間となります。

JRですと京都駅から湖西線で比叡山坂本駅まで約16分、下車後、石垣のある坂本比叡山口まで歩いて約15分の計約30分の移動距離となります。

アクセスの便利さでいうと京阪「坂本比叡山口」のほうがやや時間はかかりますが、坂本の街なみの中心に辿り着けるのでおすすめです。

駐車場はエリア的にコインパークが少ないので、日吉大社の駐車場に停めるのが一番手っ取り早いかもしれませんが、紅葉シーズンの11月のみ駐車料金が1階につき1台500円、土日祝日は1回につき1台1,000円が必要ですのでご注意下さい。

●山王総本宮・日吉大社(奥宮・金大巌)
TEL:077-578-0009
〒520-0113 滋賀県大津市坂本5-1-1
■入苑料金 大人500円 中高生300円 小学生以下無料
■拝観時間 9:00~16:30
■アクセス JR又は京阪電車が便利
・JR湖西線「比叡山坂本駅」下車、徒歩20分
・京阪電車「坂本比叡山口駅」下車、徒歩10分
■駐車場  境内無料駐車場あり(50台)
※京都方面より車で行く場合は西大津バイパス「滋賀里ランプ」で下りましょう。
※西大津バイパス「坂本北IC」は京都方面から行く場合、下りることは出来ません。


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まとめ

坂本は、比叡山だけでなく日吉大社の門前町としても栄えてきました。

街のいたるところにある穴太衆積みの石垣、そして比叡山延暦寺の鎮守神を祀る日吉大社の境内を守る石垣は、歴史の重みを感じさせてくれます。

旅の終わりに、この力強い石垣を見て、人々の信仰と技術が結びついてこの町を作ってきたことを感じ取ってもらえれば嬉しいです。

そして何より、彦根城や熊本城における大震災のエピソードなどその技術力を証明した伝統技法に敬意を表し、粟田建設社長で第十五代穴太衆頭・粟田純徳さんとの出会いに感謝申し上げます。

ぜひ、京都から足を伸ばしてあなたにも訪ねて頂きたいスポットとして紹介させて頂きました。

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この記事を書いた人
Kyotaro

京都在住、念願の京都に1戸建て住宅を新築購入した既婚の54歳、フツーの会社員からフリーランスに転身。子供は3人で男ー女ー男の“二太郎+一姫”。将来は奥さんと京都でお洒落なカフェを営むことができればいいな、とささやかな夢を持っています。どうぞよろしくお願いします。

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